「いいこと思いついた」と思った数日後には、もう内容を忘れている。
覚えていても、自分はコードが書けないから形にできない。
たまに動き出しても、気づけば続かずに止まっている。
——もしこの3つに心当たりがあるなら、それは多くの場合、記憶力ややる気の問題ではありません。「思いつきを、残して・選んで・実行まで運ぶ」仕組みが無いだけです。少なくとも私の場合はそうでした。
この記事は、横浜で個人事業をしている元社内SE(情シスの課長を長くやっていました)の私が、コードは自分で書かずにAI(Claude Code)に実装させて、Googleの仕組み(GAS)で「やりたいこと(アイデア)リスト」を自動化した実録です。
先に結論を書きます。いちばん効いたのは、アイデアを「集める」工夫ではありませんでした。集めたものを“定期的に実行させる”ところまで仕組みにしたことです。順番に話します。
目次
「思いついたのに形にならない」は、記憶力のせいじゃない
私はもともと、アイデアを思いつくほうだと思います。
本を読んだり、Xや記事で良い情報をインプットしたりすると、「これ、自分の事業に使えそう」「こういう仕組みを作れたら便利だ」と頭の中がふくらみます。
でも、そこで終わっていました。
思いついた瞬間はワクワクしているのに、気づけば日常に流されて、結局なにも形にしないまま消えていく。覚えていても、自分ではコードが書けないので、形にする手段がない。
つまり、インプットは増えるのに、アウトプットに変わらない。アイデアも情報も、貯金にならずに垂れ流しになっていく——そんな感覚がありました。
この「思いつくけど形にできない」は、3つの段階でつまずきます。
- 残らない:思いついても記録しないので消える
- 選べない:仮に残っても、どれが本当に価値あるアイデアか判断できず、全部が同じ重さで埋もれる
- 動かない:選んでも、自分から手をつけないと永遠に「いつかやる」のまま
私が見てきた「アイデア管理術」の多くは、最初の「残す」を助けてくれるものでした。きれいなメモアプリやノート術は確かに残せます。でも私の本当の詰まりは、その先の「選ぶ」「動かす」のほうにありました。

私が作った「やりたいことリスト」の中身
そこで作ったのが、思いつきを“評価して・残して・実行まで運ぶ”自分専用のパイプラインです。中身はシンプルに分けると3つです。
① 投げる:思いつき・気になったURLを放り込む
頭に浮かんだアイデア、あとで試したいこと、Xや記事で見つけた「これ良いな」というURL。こういうものを、思いついたその場で1か所に投げ込みます。
ここで大事なのは、判断を後回しにして、とにかく捕まえること。「これは価値があるか?」を考え始めると、面倒で記録自体をやめてしまうからです。まず捕まえる、選ぶのは後。
② 選ぶ:AIが内容を整理して、4つの軸で評価する
投げ込んだ内容(メモや、URLならその中身)を、AI(Claude Code)が読み取って整理し、私の判断軸にそって「これはやる価値があるか」を評価します。
私が使っている判断軸は、この4つです。
- やりたいことを“形”にできるか(実現できる手触りがあるか)
- 稼ぎにつながるか(事業の収益に効くか)
- 自分の知識・スキルになるか(やることで自分が伸びるか)
- 人生の質を上げる要素になるか(暮らしや時間がよくなるか)
この軸を通すと、「思いついた時は最高に思えたのに、4つのどれにも引っかからないアイデア」がけっこう出てきます。それは静かに見送る。逆に、複数の軸に刺さるものは「これは形にする価値がある」と判断して、リストに正式に残します。
コードを書かない私にとって、この「AIにいったん評価させる」工程が地味に効きました。全部を同じ重さで抱え込まなくてよくなったからです。

③ 動かす:残すだけで終わらせない(ここが本題)
評価して残したものは、スプレッドシートと、私のメモ環境であるObsidianに記録されます。
……ここまでなら、正直よくある「アイデア管理」です。そして、残すところで止めてしまうと、私の場合はそこから先に進みませんでした。
なぜなら、きれいに残しても、自分が意識して手をつけない限り、リストは“眺めるだけ”でなかなか動かないからです。残すことと、実行することは、別の問題でした。
そこで足したのが、リストを定期的に動かす仕組みです。寝かせっぱなしにせず、決まった間隔でスケジュールとして動かし、定期的に手をつけるきっかけが来るようにする。やるかどうかを毎回の気合いだけに頼らない形に近づけた、ということです。
この「捕まえる→選ぶ→定期的に実行へ動かす」までを一本につなげてから、止まっていたリストが少しずつ動き出した感覚があります。

コードが書けない私が、なぜこれを作れたのか
ここまで読んで、「仕組みは分かったけど、それを作るのが無理なんだよ」と思った方こそ、私と同じ立場です。私もコードは書けません。
作れた理由は単純で、自分で書かずにAIに書かせたからです。
使った道具はおおきく3つです。
- Claude Code:Anthropicが出しているAIのコーディングツールです。公式は「エンジニアの経験が無いビルダーにとっての、ソフトウェア開発への入口」と表現しています(公式ページ)。やりたいことを日本語で伝えるとコードを書いてくれますが、一発で完成というより、動かして確認し、ずれていたら直してもらう、という往復をしながら仕上げていく感覚です。
- GAS(Google Apps Script):Googleが提供する、クラウド上で動くスクリプトの仕組みです。公式の説明では「Google Driveを基盤としたクラウド型のJavaScriptプラットフォーム」で、Google製品の操作を自動化できます(公式ドキュメント)。自分でサーバーを借りなくても、Googleの上で動かせるのが、地味に大きいところです。
- Googleスプレッドシート:アイデアを貯めておく“箱”として使っています。難しいデータベースを用意しなくても、表計算ソフトがそのまま保管庫になります。
そして③で書いた「定期的に動かす」を支えているのが、GASの時間主導型トリガー(clock trigger)です。これは公式の説明でも「Unixのcron(定期実行の仕組み)に似ている」とされていて、毎分から毎月まで、決めた間隔でスクリプトを自動で動かせます(公式ドキュメント)。公式によると実行の時刻は多少前後することがあり、無料で使える範囲の実行回数にも上限があります。個人の小さな自動化で問題になることは少ないですが、動かす頻度を上げる時は上限を確認しておくと安心です。
つまり私がやったのは、「こういう“やりたいことリスト”を作りたい」という要望を日本語でAIに伝え、出てきた仕組みを自分の使い方に合わせて調整しただけ。コードの中身を一行ずつ理解して書いたわけではありません。
ここは強調しておきたいところで、「プログラミングができること」と「自分の業務を自動化できること」は、もうイコールではなくなっています。
正直な手応え:良かったこと、まだ物足りないこと
良いことばかり書くと嘘っぽくなるので、正直なところを書きます。
良かったことは、思いつきが少しずつ“貯まって・積み重なって・形になっていく”手応えが出てきたことです。前は流れて消えていたものが、ちゃんと資産として残り、ときどき本当に形になる。これは素直に楽しいし、やりがいを感じます。
AIを日々の道具にしていると、アイデアがふくらみ、「これは仕組みにできそうだ」というイメージも持てるようになってきました。小さな複利が効いてくる感覚です。
一方でまだ物足りないこともはっきりあります。いちばんは「稼ぎ」の部分です。仕組みとして回り始めて、方向としては少しずつ良くなっている実感はあります。ただ、「これで売上がぐっと伸びた」と言えるところまでは、正直まだ来ていません。ここは私自身のこれからの強化テーマです。
なので、この記事は「これさえやれば稼げる」という話ではありません。「思いつきを垂れ流していた状態から、ちゃんと貯めて動かす状態に変わった」という、その一段階の話として読んでもらえればと思います。
向いている人・向いていない人
この仕組み、誰にでも刺さるわけではないと思うので、フェアに書きます。
向いている人
- アイデアや良い情報は浮かぶのに、形にできず流している自覚がある人
- 個人事業主・フリーランスで、自分の手を増やす仕組みを持ちたい人
- コードは書けないが、AIに任せて少しずつ試すのが苦じゃない人
向いていない人
- アイデアがまだ十分に浮かんでおらず、まず行動量を増やす段階の人(仕組みより実行が先)
- 市販のメモ・タスクアプリで十分回っていて、困っていない人(無理に自作する必要はありません)
- 自分で一切手を動かさず、完全に丸ごと自動化されることを期待している人(最初の設計と調整は自分でやります)
市販のアプリと比べてどうか、という質問もあると思います。ここは優劣ではなく役割の違いで、既存のメモ・タスク管理アプリは「捕まえる・並べる」がとても得意です。私が自作にこだわったのは、その先の「自分の判断軸で評価する」「定期的に実行へ引っぱり出す」を、自分の事業に合わせて作り込みたかったから。市販ツールで足りているなら、それがいちばん早いと思います。
真似するなら、ここから始める
「いきなりAIに仕組みを作らせる」のはハードルが高く感じるはずなので、最初の一歩はもっと小さくて大丈夫です。むしろ、いきなり道具から入らないほうがうまくいきます。
- 手元のアイデアを1か所に書き出す:今あたまにある「やりたいこと」「気になっていること」を、メモアプリでもスプレッドシートでも、とにかく1か所に5個ほど出してみる。
- 自分の“評価軸”を決める:私の4軸(形にできるか/稼ぎ/自分の成長/暮らしの質)をそのまま使ってもいいし、自分用に変えてもいい。まずは手作業で、各アイデアをこの軸で○×してみると、やるべきものが浮かびます。
- 「いつ動かすか」を先に決める:ここがいちばん大事です。やると決めたものを、カレンダーに「毎週この時間」と先に置いてしまう。実行は意志ではなく“予定”で動かす、と割り切ります。
この3つは、AIもGASも無くても今日できます。そして「手で回すのが面倒になってきた」と感じた時が、AI(Claude Code)に仕組み化を頼むちょうど良いタイミングです。
私がAIにお願いしたのも、特別なことではありません。「こういう内容を貯めて、決めた間隔で動かす仕組みを作って」というように、作りたいものを自分の言葉で説明しただけです。逆に言うと、何を作りたいかが自分の中で言葉になっていないと、AIに頼んでもうまくいきません。いきなり「すごい自動化」から入らず、まず手で回して「これを自動にしたい」がはっきりしてから頼むほうが、結局は近道だと思います。
私がAIで自分の事業をどう自動化してきたかは、「コードが書けない個人事業主のAI業務自動化(実録まとめ)」に全体像をまとめています。あわせて読むと、この記事の位置づけが分かりやすいはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. プログラミングが全くできなくても作れますか?
A. 私自身、コードは書けません(自分では書かず、AIに実装させています)。やりたいことを日本語でAI(Claude Code)に伝えて作ってもらい、自分の使い方に合わせて調整しました。ただし「何を作りたいか」を自分の言葉で説明できることは必要です。そこは丸投げではありません。
Q. お金はかかりますか?
A. 仕組みの土台であるGAS(Google Apps Script)は、別途サーバーを借りる必要がなく、Googleの仕組みの上で動きます。AIツール側の利用料は別途かかります。料金やプランは変わることがあるので、最新は各公式サイトでご確認ください。
Q. 結局いちばん効いたのは何ですか?
A. アイデアを「残す」だけで止めず、「定期的に実行へ引っぱり出す」ところまで仕組みにしたことです。残すだけのリストは、私の場合なかなか動きませんでした。
まとめ:思いつきを“流す”か、“積む”か
アイデアが浮かぶのに形にできないとき、私の場合に足りなかったのは、能力よりも「残して・選んで・動かす」仕組みのほうでした。
必要なのは、捕まえる・選ぶ・定期的に動かすの3つをつなげること。そして今は、その仕組みづくり自体を、コードが書けなくてもAIに任せられる時代になっています。
まずは手元のアイデアを5個書き出して、「いつやるか」を1つだけカレンダーに置いてみてください。流していたものが積み上がりはじめる、その最初の一歩になるはずです。
※本記事は筆者個人の体験にもとづくものであり、効果や成果には個人差があります。各ツールの仕様・料金は変更される場合があるため、最新の情報は各公式サイトをご確認ください。